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Melty‐Kiss

RatingPG  J/C

あらすじ:チャコティの好物は、意外にも「チョコレート」だった…。

      スタートレック・ヴォイジャーと、それに登場するキャラクターに関する著作権はパラマウント社に属します。この作品はそれを侵害しようとするものではありません。転載をご希望の場合はご相談下さい。また本作はMeijiの「Meltykiss」へのオマージュとして作りましたが、「Meltykiss」は明治製菓の登録商標であり、この権利に関しても先と同様です。

艦長私的記録、宇宙歴48○○○.2最近ブリッジでは、雑談でプライベートな話題をすることが多くなった。アカデミーでの思い出や、家族のこと、子供の頃の夢など。今日の話題は、好きな食べ物だった。 

操縦席にはトム、通信席はハリー、戦術コンソールにはトゥヴォック、そしてコマンド席にはキャスリンとチャコティ。つい何週間か前までは敵対する組織のリーダーだったはずのチャコティだが、もうその緊張感はなく、ブリッジは和やかな雰囲気だった。

その話題になったのは、ハリーが地球(正確には家族)への思いを語りだしたからだった。彼の両親は1人子にたゆまぬ愛情を注ぎ、それを表現することも惜しまなかったようだ。

「地球に帰ったら、まず母のアップルパイを食べたいですね。レシピが特別なんだそうです」

「どんな風に?」

料理が苦手なはずのキャスリンだったが、「特別」という言葉に魅力を感じて聞いてみた。

「それが、教えてくれないんですよ。母いわく『娘か息子の嫁にしか教えられない』だとか」

「ただママが作ったってだけで、他と変わらなかったりしてな」

操縦席の友人が口を出した。

「そんなことないさ!じゃ、そういう君は何が食べたいんだ?」

「オレか?地球のものでまず食いたいのはピザだな。マルガリータがいい。そうじゃなかったら、チーズバーガーかホットドッグ」

いかにもトムらしかったが、パリス提督が聞いたら苦虫を噛み潰したような顔をなさるでしょうね、と思い、キャスリンは苦笑いした。

「トゥヴォックはどうなんだ?食べ物の好みなんてあるのか?」

キャスリンはトムの続けた質問に気付いて、古くからの友人に顔を向けた。

「そういえば、あなたの好みを聞いたことなかったわね」

トゥヴォックは定時報告をするかのように、淡々と答えた。

「バルカン人の料理は地球人より薄味です。特に香辛料の類はほとんど使いません。しかしながら、舌は他種族の刺激的な味にも耐えられます」

「そうじゃなくて、あなた個人の好みよ」

「それは…なんとも。他のバルカン人とは比較したことがありませんので。出されたものを食べ、栄養のバランスを考え、次の食事を決めます」

今度はトムが苦笑した。

「それじゃ、気分ってものでは決めないのか?」

「その通りだ。バルカン人は気分を持たない」

「はっ、面白くねぇな。チャコティは?一番好きな食いもんは何なんだ?」

それまでただ微笑んで会話を聞いていたチャコティは、さらりと言い放った。「チョコレートだ」

その場にいた全員が固まった。こんな答えは誰も予想していなかった。

「…チョコレート? あのチョコレート?」

一番近くにいたキャスリンが聞いた。

「はい。いけませんか?」

チャコティは自分に向けられている視線に気付くと、少し居心地の悪さを感じた。

「私は甘党なんです。キム少尉じゃないですが、母が作るパイやケーキはこの上なく甘かった。父はどう思っていたか分かりませんが、私の兄弟はみんな甘党ですよ」

ハリーは上官のピンチを何とかしようと、とりあえず口を開いてみたが、何をどう言えばいいか分からずブリッジクルーを見ていた。冷静さを取り戻したのは、やはりトゥヴォックだった。

「これは、意外ですね」

「ええ、とっても意外だわ。甘いものを口にするようなイメージじゃなかったのに…」

言っているうちに可笑しくなってきて、キャスリンは言葉を継ぐことができなくなった。チャコティが見渡すと、笑いを堪えているのは彼女だけではなかった。やがてトムが耐えられなくなり、ハリーがつられてふきだしてしまい、チャコティとトゥヴォック以外のブリッジクルーが笑い出した。

 正直に言うんじゃなかった――恥をかいたチャコティは心底後悔した。

 シフトが終わると、チャコティはそそくさと自室へ引きあげた。明日には「チャコティ副長は甘党」という噂が面白おかしく艦中に広がっていることだろう。マキの司令官として、またヴォイジャーの副長として保ってきた威厳もぶち壊しだ。そしてなにより、このごろ気になりだした美しい上官の前で恥をかいてしまった。テーブルの上に置いてあるチョコレートを睨みつけて、彼は毒づいた。たかがチョコレートで。

『ジェインウェイよりチャコティ』

悶々と後悔をめぐらしていたチャコティは、いきなり聞こえてきたその人の声に少しどぎまぎしてコムバッチに触った。

 「チャコティです」

 『お部屋にいるんでしょう?少しお邪魔していいかしら』

 「はい、どうぞ」

反射的に答えてから、しまったと思った。が、1分と経たないうちに、ドアのチャイムが鳴った。

もう来たのか。艦長、部屋の前で通信してたんじゃないか。応えあぐねていると、またチャイムが鳴った。

 「どうぞ」

チャコティは覚悟して言った。無機質な音を立ててドアが開き、「美しい上官」が姿を現した。

そのとき彼は、少し驚いた。キャスリンは制服ではなく、ラフな私服だったのだ。 「なんでしょうか、艦長」

「ええ、シフト中に好きなものの話になったとき、みんなであなたのことを笑ってしまったでしょう?あの時は、楽しいお喋りのつもりだったんだけど、あなたあれからあまり口をきかなかったから。その…傷つけてしまったんじゃないかと、思って…」

傷ついた、まさにその通りだったが、まさか彼女が気にしてここまで来るとは。思いがけない優しさに、チャコティは頬を緩めた。

「そんなに気にしてませんよ」

「本当に? よかったわ」

部下の小さなプライドに気を配るこのトップを可愛く思ったチャコティは、少し彼女をからかってやることにした。

「でも確かに恥をかいたな。それに艦長、一番はじめに笑い出したのは貴女だ」

正確には最初に声をあげて笑ったのはトムだが、この一言はキャスリンをまごつかせた。

「ごめんなさい、チャコティ…」

「償って、もらおうかな」

何をしてもらおうと考えていたわけではなかった。ただ、少し困ったキャスリンが見てみたいだけだった。予想通りのキャスリンの表情に、チャコティは満足して椅子に座り、テーブルの上のチョコレートを一つ取ると、口に放り込んだ。冗談ですよ、口の中のチョコレートがなくなったらすぐにそう言うつもりだった。

「償う?」

そこまで言われると思ってなかったキャスリンは、一瞬どうすれば良いか分からなくなったが、すぐにチャコティがわざと大げさに自分を責めていることを見抜いた。そして、報復にでた。

「いいわ」

キャスリンは素早くチャコティに近寄ると右手で頬に触れ、唇を重ねた。さらに、ゆっくりとチャコティの唇を開いた。

二人の間で、チョコレートがゆっくり溶けていった。

                                               FIN

 【あとがき】 初めてのFANFICでしたが、(ちゃんと書けているかどうかは別にして)あまり澱むことなく一気に書き上げました。映像で見たことのある世界を描くのは、文字でしか知らない世界を想像するより楽しいですね。さて、第1作は、先行のFANFICに何故かたびたび登場する「チャコティ甘党説」が元になっています。本編でそんな描写があったかな…?とは思ったのですが、「チョコレートを使ったKiss」という案に結びついたので、そのまま使いました。イメージはミルク味です。本当はもっと続ける予定だったのですが、この方が締まるかなと、思い切ってきりました。

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