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大人すぎる妖精―ケス考

 あなたはヴォイジャーで育ったのよ、ここが家。

※本編でのネタバレを含みます(シーズン6まで)。

 シーズン4が始まって、ケスがヴォイジャーを去りました。よく知られている通り、シリーズのずっと後で「再登場」しますが、一応第70話「The Gift」で最後ですのでこれを書こうと思います。

「ヴォイジャーの妖精」と称されるケスですが、可憐な姿、優しい言葉、そして可愛らしい笑顔はまさに「妖精」でしょう。あ、ちなみにイギリスの本式「妖精」って、実はあんまり可愛くないんですよ。ハリー・ポッターに出てくる「屋敷しもべ妖精ドビー」っているでしょ、あんな感じで。でもま、この場合の妖精はもちろん、洒落たタロットカードに描かれているようなヒラヒラ可愛い妖精で。

さて、ここまでKathryn's logを読んでくださっている方、またVOYを見ている方は当然ご存知かと思いますが、ざっとケスの半生をおさらい。ケスの母星はオカンパ。「管理者」と呼ばれる高度なテクノロジーを持った異星人によって文字通り管理され、地下で生活していました。元々ちょっとしたテレパシーを使うくらいの超能力がある種族でしたが、特にそれを発展させようという気はなかったようです。ケス自身は、進歩的なお父さんの影響か、好奇心旺盛な少女でした。それが高じて、ついに地上に出てしまいます。そこは、ケイゾンがのさばる砂漠の星でした。非力な彼女は捕らえられ、こき使われていました。 ヴォイジャーとの出会いはそんな時。ニーリックスはヴォイジャーを利用し、虐げられていたケスを救い出しました。艦長は、オカンパのために死んだ管理者のアレイを破壊。地上に出てひどい目にあったにもかかわらず、ケスは宇宙の旅に参加することにします。そしてドクターの助手になり、その驚異的な記憶力と学習力で医学を修得していきました。 その後、第2の「管理者」サスピリアの元で暮らすオカンパ人に会ったり、生命体8472とテレパスで交信していく中で、彼女の超能力は高まっていきます。その究極として、体の分子構造は結合力を失います。艦への影響を避け、またそれを「より高い存在への転身」だとしてヴォイジャーを去ったケスでした。

恋愛歴としては、主にはニーリックスとの恋愛でした。オカンパではパートナーを決めたら喧嘩も嫉妬も疑いもなし、なんだそうで、ニーリックス一筋に楽しい恋愛をしていました。まぁトムに惚れられたりもしてましたが、ケス自身は心変わりすることはありませんでしたが…。暴君の異星人に体を乗っ取られたときに、心境の変化が起こります。些か拘束気味だったニーリックスと別れ、その次のエピでは旅好きな異星人に恋したりしてます。

師としては、医学の師ドクター(生活指導も担当)、超能力の発展や制御に関してはトゥヴォックでした。シャトルの操縦をトムに習ったこともありましたね。でも、なにか悩んだ時には艦長のところに行くのが常です。艦長もそんなケスをとても可愛がっていました。

そんなケス、ですが私はとっても疑問に思うことがあるんです。それは「大人すぎる」こと。「おませさん」って意味じゃなくて、本当に何かを悟ったかのような言動が見られました。印象的だったのは、ヴォイジャーが空間変動波に襲われる話で、ケスの2歳の誕生会の後、ニーリックスに「何が一番嬉しかった?」と聞かれ「みんなが私のために集まってくれたこと」なんて言う台詞。人間年齢に単純計算してもハタチですし、そりゃあまぁある意味大人かもしれませんが、20歳の女の子がこんなこと言いませんよ。プラス、唯一恋愛に関してはアンバランスさを見せるケスが、ニーリックスの男心を見通せなかったのではないか、とも思うわけですが…。(「あなたの作ってくれたケーキ♪」って言ってほしかったんじゃ)。もっと前、シーズン1の終りで、ニーリックスの星に落とされたとてつもない爆弾を作った人が現れるエピがありましたね。あの時はもっと幼かったはずですが、おじさんニーリックスを支え、彼が自覚してなかった心の底まで見通しています。アメリカの若者ってああなの?常に人の話を聞き、的確な助言をし、ほとんどのことに恐れることなく向かっていきます。勇気と芯の強さを持っているその姿は、あんまり若々しくないんですけど…。そりゃ、オカンパは地球人より成長が10倍くらい早いかもしれませんが…。ケスには関係ないことですが、Qに対して艦長が「人間性や愛情は時間をかけて育てていくもの」みたいなことを言ってます。時間に対する感覚は他の人と変わりません(一日のサイクルはみんなと同じです)から、物事の経験は2歳で2年分です。その2年の経験で、どんだけしっかりしてるんよ、ってなもんです。

もう1つ細かいところを言わせてもらえば、終盤でのあの衣装。どうにかならなかったの?オカンパの服で充分可愛かったのに、急にボディピタのスーツになっちゃって。超ナイスバディのセブンが着るのは、まぁ仕方ないとして(私服バージョンのセブンは逆にセクシーですしね)申し訳ないけど、ケスでは体のライン強調できませんよ。

ケスの降板に関しては、制作側がケスのキャラクターに限界を感じたからだ、と特典映像で語られてましたが、初期設定をもっと精神的に幼いキャラにしていたら、成長を描けたんじゃないかと思います。1シリーズが7年というスパンで動くSTシリースの中で、寿命が8歳(ヴォイジャーと出会った時点で1歳になるかならないか)ですから、VOYがシーズン7になる頃には「老い」まで見せて、短いシリーズで1人の一生を描くなんて離れ業をやってのけれたんじゃないかと。そういう意味ではセブンの心の幼さは、ケスと対照的で人気が出たんでしょうね。そして、見かけの幼さはナオミがカバーする、と。

ここからは、シーズン6・7のネタバレになります。

シーズン6では、老いたケスがヴォイジャーに戻ってくるエピがあります。分子が崩壊したんじゃなかったの?とか思うわけですが…。エピソードの作りや、ビジュアル的に色々あって避難ゴーゴーのエピだったんです。ま、それはいいとして、艦長やトゥヴォックが危惧した通り、ケスは自分の力をコントロールできなくなり、恐れと孤独の中で生きてきました。そしてそれを全て「ヴォイジャー(艦長)のせい」だと思い込んで怒りに燃えます。ワープコアを使って過去のヴォイジャーに現れ、艦をヴィディアに売り渡して若い自分をオカンパに連れていこうとするのです。このときのケスは人間で言うと60~70代くらいになるでしょうが、このケスの方が、私はむしろ若者らしいと思うわけです。好ましい、とは思いませんが。またこのケスの行動は、最終回のジェインウェイ提督の行動に通じるところがありますね。しかし、ケスが最終的にどうなるか分っていたにもかかわらず、同じように行かせてしまった、というのが悲しいところですが。

総じて、ケスのキャラクターは、設定段階では非常に魅力的でした。でも、細かいディティールというか、もう少し余裕をもって始めてほしかったですね。小さく産んで大きく育てる、みたいな。ジェニファーさんの演技も素敵だったし、ヴォイジャーの妖精をもっと見たかったです。

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コメント

浅木さんのケス考、妖精ケスにとても愛着を持っているのが感じられます。
ケスが再登場するシーズン後半でケスのイメージが変るかもしれないくらいのことがあるんですね。まだ未見なので記事を読ませて頂いた感じだと38話で登場した成長が地球人とは逆というドレイアン人を思い出しました。
再登場のケスを見てからケスのことをもう一度考えたいと思います。

投稿: モリー | 2008年3月11日 (火) 18時04分

>モリーさん
>>妖精ケスにとても愛着を持っているのが感じられます。
ありがとうございます。実は私、その再登場のエピがケスの初見だったんですよ。だからDVDで改めてケスを見たとき「ええっ?!」と思ったものです。…いろんな意味で。ほんと、別人です。
ドレイアンというと、トゥヴォックが歌ったあのエピですよね。確かに彼らも、「老いると子供に戻る」を体現した種族でしたね。

投稿: 浅木 | 2008年3月12日 (水) 03時42分

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