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艦随一のお人よし―チャコティ考

 「俺はお人よしなのか?」 …はい、その通りです。

※最終回までのネタバレを含みます。

 なんちゅう失礼なタイトルを付けたもんかとも思いますが、このセリフを初めて聞いたとき、シリーズの後半を知っていた私は本当に「その通りですよ、副長」って思いました(笑)。

 えっと、まずは基本データのおさらい。とは言うものの、諸般の事情からきっちりとした出生その他が語られたシーンはかなり少ないチャコティ副長。で、色んな方のHPなどを参考にしてみましたが、なるべく本編にある情報のみでやっていきたいと思います。

 生まれは2329年(最終回「可能性の未来」と呼ばれる未来での、副長のお墓より)。δ宇宙言いに飛ばされた時点ですでに40代のおじさまです。地球ではなく、副長の部族が住む星で生まれています。15歳まではそこで生活していましたが、部族の伝統を大事にするお父さんに連れられて、地球に来たことも。ただ、その時ご本人はあまりそういうことに積極的になれず、というよりむしろ懐疑的だったようです。紹介を受けて、艦隊アカデミーに入学し、士官となっています。しかし、故郷での戦闘等々の事情から、当時できたばかりの「マキ」に転身。この「マキ」ですが、ヴォイジャー就航わずか1年前にできた新しい組織なんですね。と、いうことは副長もそれほど反政府組織歴は長くない、ハズなのですが、その辺はエピによってまちまちで、さも長年マキにいた(マキがそれほど長い時間かけた組織)かのように言われるときもあるんです。

んで、副長がなぜマキに…この辺の事情が本編ではあまり(っていうか全然)語られていないのですが、プロフィックを読んだ方のHPでの説明をいろいろ見ていると、どうやら故郷の星や家族がカーデシアにやられたらしいのです。そういえば、α宇宙域に手紙が送れるかも知れないってなったときに、副長は地球のいとこへ手紙を書いてました。血縁者がそれくらいしかいなくなってしまっている…ということでしょうか。マキではリーダーを務め、艦隊から指名手配を受ける身分に。それがなければ、全ては始まりませんでした。

 VOYの初っ端、オープニングはSF映画おなじみの語りですが、そのあと画面いっぱいに現れるのがこのお人。バッドランドでカーデシアに追われていました。そして、ヴォイジャーより先にδ宇宙域の端へと、七万光年のダイブ。おそらく抵抗する間もなく、管理者に遺伝子サンプルを採取されたと思われます(これがまた痛そうなんだわ…)。ヴォイジャーのクルーと同時に自船に戻された彼は、ベラナがいないことにすぐ気付きます。艦長からの呼びかけで、ヴォイジャーと一時的に協力することにします。でもヴォイジャーに転送した途端、トゥヴォックはスパイだったと分かるしドジ踏んで捕まったハズのパリスが艦隊の制服を着てそこにいるし…。もーサイアクな気分だったことでしょう。

 ヴォイジャーと協力するという約束を真面目に果たし、自分の船を体当たりさせてまでケイゾンを追っ払った副長。そう、艦長の特攻作戦ばかりが批判されますが、VOYで最初に突っ込んでいったのは副長ですよ。ただ、彼は衝突の直前に自分もしっかり転送してもらってますが。

 浅木的なチャコティ副長のツボは、ブリッジで艦長が管理者のアレイを破壊するという決断をしたとき、反発するベラナの腕をつかみ「彼女が艦長だ」と言ったところ。その後艦長とどのような話し合いがなされたかは分かりませんが、彼は副長としてヴォイジャーのクルーに、そして艦隊士官への復帰を果たします。チャコティ副長としては、別に艦隊が嫌でやめたわけではないっぽいんですよね。艦隊とマキのどっちかをとらざるを得なかったから、艦隊をやめたって感じがします。そういう意味で、ベラナや他の元マキクルーとは一線を画したり、あるいはオリジナルクルーとの橋渡し的な役割を果たすこともできたのでしょう。副長を副長にしたのは、元マキクルーに配慮した政治的判断に過ぎないっていうのがけっこう聞かれる意見です。もちろんそれもあるでしょうが、単純に考えて艦隊を除隊した時点で「Commander(これが中佐なのか少佐なのかさっぱりですが)」だった彼は、(同時大尉だった)トゥヴォックより階級が上ですから、副長になって当然だと思います。それにプラスして、やっぱり艦隊の理念やなにかに反対しているわけではなかったというのも大きかったでしょうね。それが証拠に、艦隊の規則になじもうとしない元マキクルーは、マキ流に一発やってでもそれを徹底。反乱を起こすなら協力しますというセスカたちには「もう一度そんなことを言ったら拘束室行きだぞ」と言ってのけてましたから。

 初期の副長はそんな風に、真面目でありながらもたまに荒っぽい一面を見せてくれる人でした。男らしいというか、なんというか。艦長に対して「飾り物の副長になるつもりはありません」と宣言しちゃったり。シリーズ後半になると、ほんとに「丸くなったね~」と言いたくなることもしばしばですが、艦長がいないときはしっかりブリッジで指揮をとります。普段は穏やかな渋い中年です。しかし、艦長の安否がかかると急にベラナを怒鳴りつけるシーンなんかもあったりして、その辺はJ/Cとしてはツボでございます。

 副長として、最初はトムのスパイ作戦でハミ子にされたりしてましたが、すぐに艦長はじめクルーの信頼を得るに至ります。艦長が「反乱よ」と嫌味を言った、あの空虚でのラストでも、艦長を船に留めるためにクルーを率いて説得にかかります。あ、そうだ。時々操縦席につくことがありますよね。みんな基本的な操縦はできるんでしょうけど、トムが不在の時に何か事が起こったら、一番前に陣取ってテクったところを見せてくれます。

 彼の意外な一面としては、マメ男なんですわ。艦長と「NewEarth」で暮らした日々では、艦長のためにバスタブや背もたれ作ったり、毎日のお料理までなさったそうで。人員配置とかシフトとか、微妙な気遣いが必要な仕事も彼に回ってきています。

 チャコティ副長の恋愛。いってみましょ。

 もちろんJ/Cとしてはジェインウェイ艦長との関係が至上の愛だと思いたいのですが、本篇に従うと一応「何もない」ことになっています。いや、何かあったと言及されていないだけです。単純に考えれば、あの星で、あのあとあったでしょうよ。と思うわけですが、あったとしてもヴォイジャーに戻ってきた時点で「艦長」と「副長」に戻ったようです。ただ、2人の信頼関係はそのころ(2シーズン中ごろ)から急速に高まっています。艦長からのあれこれはまぁ今回置いておいて、少なくとも副長は艦長のこと、好きでしたよね。2人でミッションに出た時、艦長の息がとまったとき号泣して「だめだ死ぬんじゃない!」と艦長をかき抱いたあの姿…。艦長の意識が戻るまで涙目でした。

 最初に副長の色恋の話が出てくる時、相手はセスカでした。マキ時代の彼女だそうで。ヴォイジャーに乗った時か、それより前に別れたはずで、チャコティの方はもう全然気持ちがなかったんですが、セスカはまだ副長が好きだったようでなんと彼の子供まで勝手に身ごもって…ていうか産んだんです。結論から言うと、正確には失敗してしまって、チャコティの子供ではなくカラの子を産んだセスカですが、おそらく最期まで副長を諦めきれなかったと思います。下手にいい友達っぽくしちゃったのが、副長の優しいところだったんでしょうね。

 その他、単発でいくつか。艦長よりも行きずりっぽいのが多いです。セスカがらみがシーズン3のあたままで来ていたので、最初は59話「Unity(ボーグ・キューブ)」でしょう。墜落した星にリンクが外れたボーグドローンがわんさといて、彼らに病気治療と称し「神経接続機」を埋め込まれてしまいます。治療が終わった後、元地球人の元ボーグ女性と「感覚を共有」したのです。若干なまめかしいシーンではありましたが、その後彼女は副長を利用したのですし、ずるい。次は90話「Unforgettable(姿なき追跡者)」まで飛んで、記憶に残らないというわけのわからん生理機能をもった女性(耳がオカンパ人に似てます)と彼女いわく「2度目」の恋愛関係に。ハッキリ言っていいですか?「あんた、その話本当か?」彼女がヴォイジャーに乗ったのはどうやら本当のようですが、副長と恋に落ちたかどうかは、完璧に彼女の話のみで。それでも、2回目副長と恋に落ちるんですが、今度は追われる身となっていた彼女は、追跡者に記憶を消されて副長のことをすっかり忘れ、さっさと自星へ帰っていきます。がっつり傷ついた副長ですが、せめてと、彼女とのことを夜中の食堂で書きとめていました。でも立ち直りが早いのか(あ、忘れたのか)8話後の98話「In the Flesh(偽造された地球)」では、地球人に化けた生命体8472とデートを重ねてます。でも、これはなんか、本当に行きずりって感じでしたね。次。ヴォイジャーがスリップストームに失敗して氷の星に墜落したとした15年後の未来で、協力してくれる女性は副長の恋人でした。この人偉いと思うんです。副長と自分の生活とか、もう出会いからなにから全部消えちゃうのを承知で、副長の望むように協力する。なかなかできるこったございません。

 んで…これにも触れざるを得ないのですが、最終回になって急にセブンとのお付き合いが始まります。すっごい歳の差ですけど、そこはあんまり不自然じゃないんです。ただ、んじゃ今まではなんだったんだってなもんで、これも行きずりちっくな感が否めないんです。提督が過去に来るための口実で、ストーリーの構成上仕方なかった、って感じです。とり様によっては、艦長は副長を愛していたから、彼がセブンを失って人が変わってしまったのを見るのが辛かった…とも取れるのですが。だって提督は過去へ旅立つ前に、セブンの写真とかお墓じゃなくて、チャコティ副長(その時は提督クラスだと思われますが)のお墓へ行くんですから。セブン考でも書きましたけど、副長とセブンはちょっと無理だと思うんです。性格的に。

 恋愛話はこれくらいにして置いて、彼は「クリフハンガーになると艦長に逆らう」という癖をもっていらっしゃるようです(笑)。ま後半は暴走する艦長を止める役割のほうが多くなってきてますが、最初の暴走はむしろ副長です。

 えーあとは、細かいことを挙げると、ベジタリアンなのにニンジンが嫌いだとか、でもセブンが食堂でみんなに作った料理は食ってたぞとか。いろいろあるんですが…。

制作側に、チャコティ副長の設定として大いに不満があるのは、その一貫性のなさです。15歳になるまで自分の文化に対して懐疑的だったはずの副長が、セブンに「おれは6歳で人類学者になりたかった」と語っています。6歳で人類学者もあり得ませんが、人類学に興味があったならどうして自分の部族にもっと興味を持たんかったのか。ボクシングをやる話も出てきますが、そんなのも初めて聞いたぞ、てなもんです。マキでやっていけるくらいですから、初期も時々見せていた荒っぽい面を再燃させたかったのか、格闘技が好きなんて設定が追加されてますし。大体、艦長のこと好きでしょうよ、って様をさんざん描いておきながら、あっちこっちで手を出させたり最後はセブンとくっつけてみたり。

 個人的には、副長の過去をもうちょっといじって欲しかったです。地球人クルーでも、みんな故郷にそれぞれ事情を抱えています。婚約者を残してきた艦長、トゥヴォックは妻子を残してスパイに出てましたし、家庭との関係に問題があったベラナ、パパに対して素直になれなかったトム、恋人を残したハリー(艦長と一緒じゃん!)、ニーリックスは戦争で家族を亡くし、セブンは言わずもがな。ケスくらいじゃないですか、あんまり故郷のこと気にしなかったのは。副長だって、マキに加担するきっかけになった、家族の死とかあったわけですし、そこんとこに触れたエピが一個もないって言うのはどうかと思います。何より、もともと地球に住んでた部族の末裔って役でしょ?苗字ないの?

 チャコティ副長役のロバート・ベルトラン氏は、メキシコ系でVOY以前にもネイティブの役をやったことがあったとか。子供のころは探検家になりたいと思ったこともあったそうですが、地球がもう探検し尽くされていると感じて断念。俳優になってからも、宇宙やSFという発想はあんまりなかったようです。共演者のインタビューによると、彼自身は冗談を言ったりふざけたりするのが好きな陽気な人だそうです。一回その地でやって。

 総じて、もうちょっとできたのになぁという一言になります。行きずりの恋はもういいですけど、艦長との恋愛も最終的に実らなかったのはそら制作の意図でしょうけど、もうちっと何かあって別れたってことにしても良かったし、いやむしろがっつりつき合った状態で未来の提督からセブンのことを聞かされた方が、艦長としても動きやすかったのでは?彼のバックグラウンドも掘り下げてないし(文化的なことじゃなくて)。でも、副長としては最高の人物でしょう。トゥヴォックはこの人事には驚いたようですが、セカンドとしてきっちりできて、しかもTop経験者なんてそういません。だから、艦長の気持ちも分かるって。それに、本人はマキの中に何人もスパイがいたことで、自分はお人よしだと嘆いていましたが、それでいいんですよ、副長。心優しき穏やかな副長が、ヴォイジャーには必要です。 

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コメント

こんばんは。
>…総じて、もうちょっとできたのになぁという一言になります。
同意。
まぁVOYに関しては、副長に限らず一部を除くメインキャラ全てに当てはまるモンダイなのですが、キチンと掘り下げられていませんよね~^^;。
特に男性陣に魅力的なキャラが多いだけに残念。
自分も結局副長は艦長が一番、だったんじゃないかと思っています。最終話近くのセブンとの関係はいかにも取って付けたようですし、性格合わなさそうですよねぇ、どう見ても。
幽人的副長のツボは「生命体8472(前後編)」です。初見の時は対立するコマンドチームにホントにハラハラ。副長カッコよかったです~(^^)。
なので後半、丸くなられてやや不満が残ります。
視聴率の問題がなければ、きっともっと違ったのでしょうが…。

投稿: 幽人パリス | 2009年1月13日 (火) 22時17分

>幽人パリスさん
>>VOYに関しては、副長に限らず一部を除くメインキャラ全てに当てはまるモンダイ…
そうですよね、ほんと。トムで言えばオーエンパパとの関係が気になります。とりあえずパパのほうとしては、パスファインナーの回で素直に息子へ愛を伝えましたけど(あれは感動しました)、それだけであの親子は修復できるかっていえば…ですよね。地球と通信ができるようになって、ベラナのパパと話しているシーンはありましたけど、オーエンパパとトムが話してるシーンがなくて「ほんでどうなったんやって!」って、結構消化不良です。
 初見で、セブンと3度目のデートだって浮かれてる副長を見たときは「何があった副長ー!」って思っちゃいました。百年の恋も、じゃないですけど何があって艦長からセブンにシフトしたのか、さっぱり謎です。
「生命体8472」は、私もハラハラしました。最初は、命をかけた艦長命令を反故にした副長にちょっと疑問がありましたが、今思うと彼は彼で辛かっただろうなぁ、なんて。
 私は、シリーズ後半から見始めたので、DVDを買って初期の副長を見たときには意外でした。怒鳴ったり殴ったり「おー…」って、それはそれでかっこよかったですけどね。
>>視聴率の問題…
テレビですから、それを気にするのは分かるんですが、方針転換の方向が間違っていた気がします。それなら、むしろ初期の方針を通した方が良かったのでは?と。

投稿: 浅木 | 2009年1月14日 (水) 03時11分

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